びっくりです。
優秀な技術者を「一円も価値を生まないセクター」に幽閉する愚行 - Chikirinの日記ソニーで働く人達は、新卒入社の段階では日本で最も優秀なエンジニアの卵だったはずです。その人達が一生懸命働いて8年間、一円の価値も生んでいないなんてびっくりです。
「自分のアタマで考えよう」なんて本を出している人が、これほど自分の頭で考えてないことを平然とblogにうpしていることに。
一週間ほど、一家でハワイ島に行ってきた。
まだコナ直行便があって、燃油サーチャージがなかった頃に、ほとんど考えずに買ったタイムシェアをはじめて体験するために。今頃になってそうしたのは、やっと娘達のスケジュールが合ったから。いくら親が自営業でも、学校通いの娘達はそうおいそれと休めない。いや、親の都合>>>>越えられない壁>>>>学校の都合と普段から言い含めてはいても、それを鵜呑みにする彼女達ではない。そのことを失念していただけでもいかに考えてなかったかがわかるというもの。
ホノルルまでの足は、JAL。コナ直行便が廃止されたのにそうしたのは、クレディットカードのポイントをマイルに変換するのにそれが一番有利だったから。おかげで一家4人のうち末娘の分を除く3人分はそれで賄えたけど、燃油サーチャージは別勘定。席はエコノミー。夫婦のみないし自分のみなら遠慮なくアップグレードしてたけど、娘達までそうするほど甘い親では我々はないし、しかし子供だけエコノミーにのせるほど甘やかさぬことに徹底しているわけでもなしというわけで。
で、驚きつつ納得したのが、キャビンアテンダント(CA)の顔ぶれ。
全員、タイ人。往路も復路も。
いや、この場合日本人じゃなかったというべきか。フラッグ・キャリアという言葉が死語になったかどうかは知らないけれど、フラッグ・キャリアーにすら自国の乗務員が割高すぎるという現実が、自分のアタマで考えるまでもなくそこにある。
それでサービスの質が低下したかというと、全くそう感じなかった。英語も日本語も外国語ではあるけれど、機内サービスを提供するには十二分なレベル。ちきりんのお面より出来の悪い作り笑顔をはりつけた米系キャリアーのCAよりよっぽど好感度は高い。彼女たちが誇りを持って仕事をしていることは弾言できる。
でもそれは、かつてそこで誇りを持って仕事をしていたはずの日本人CAたちは、彼女達よりも劣っていることを意味するのかな?
そうこうするうちに現地で我々を出迎えたのは、完璧な気候と劣悪な回線。日本では実力を発揮し切れないSiriと存分にお話しようという私の淡い希望は粉々に打ち砕かれた。mifiも、部屋の無線LANも、有線LANでさえ右のような速度では、Siriの返事も30秒待ち。彼女にとってハワイ島は日本よりずっと遠い場所のようだ。
それでもiPhoneは八面六臂の活躍をしてくれた。mifiが途中で死んでしまったにもかかわらず、あらかじめ地図をキャッシュしておいたおかげでその後も立派にカーナビの代わりが務まったし。写真も動画もいっぱいとれたし。ティップの計算までしてくれたし。
以下のようになるのも、納得。
別にソニーだけが負けてるわけじゃない。Appleが独り勝ちしているだけ。全体の数ではiPhoneを上回っているはずのAndroidも、ビーチリゾートでは形見の狭い少数派。そこでお金を落とす人も、そのお金を拾う人もどっちもiPhone。リゾート内のシャトルバスで鳴ったあのデフォルトの着信音に全員が自分のiPhoneを確認したのには苦笑するしかない。もちろん私もその一人。あ、一人確認しなかったのがいた。私の長女。彼女は着信音をカスタマイズしてたので。
でもこのことって、iPhone以外のスマートフォンを作ってる「まだ一円も稼いだことがない」人々って、Appleの中の人々より劣っていることを意味するのかな?
で、今回のメインイベントは、こちら。
マウナケア天文台群。一週間の滞在で二度も行った。一度目は妻とすばるの内部見学に。二度目は長女と夕暮れと星空を観に。通算では三度目。
この天文学におけるボードウォークに投じられた費用は、軽く20億ドルを超える。すばるだけでも400億円。今そこにある全ての反射鏡面積合計を軽く上回るTMTが出来たら30億ドルを超えることになる。
それだけの血税を投じて、我々は何を得たか?
金額であれば、ゼロ円ということになる。
ソニーで働く人達は、新卒入社の段階では日本で最も優秀なエンジニアの卵だったはずです。その人達が一生懸命働いて8年間、一円の価値も生んでいないなんてびっくりです。
その程度のことで驚くちきりんが、自分自身の天文学研究と20年の歳月を棒に振ってすばるを実現させた小平桂一に驚く以前にそういう人がいることすら知らなさそうなことに私は驚きを禁じ得ない。
こういう状況に、日本で最も優秀な人達を幽閉していることの罪は、余りに大きいと思うのです。なんで彼らがこんな「罰ゲーム」みたいな部門で、働き盛りの8年間もの期間を無為にすごさねばならないのでしょう?
幽閉?
誰が?誰を?
ソニーの中の人々もすばるの中の人々も誰かに強制されてそこにいるわけじゃないよね?
自分のアタマで考えた結果、そこを選んだんだよね?
少なくとも私がタイムシェアを買ったときより、よっぽど考えてそこを選んだことは確かでしょう。
その結果が期待通りだったか否かは、彼らがそれぞれ考えるべき問題であって、それ以外の我々が代わりに考えようだなんて、「大きなお世話」以外の何なのか。
それどころか、iPhoneを生み出した国の回線がグダグダなのは、こうした「大きなお世話」を「大きな立場」の人々が真に受けて来た結果の積み重ねではないか。
帰国した我々を待っていたのは、生まれたばかりの甥。彼がすばるを見学できるようになるぐらいまでは、「一円の価値も生んでいない」事業に血税を投じられる国でありつづけて欲しいのだけど。
Dan the Man with His Own Business -- and Vacation
利益と価値は違うものだし