出版社より献本御礼。

あまりに想定内の書籍化。むしろマンガ人口とハカセ人口の大きさを考えれば、2012年までこうしたマンガが出なかったことこそ驚きかも知れない。

もっとも「それがいつ具現化するか」がいかに皮算用どおりにならないかを、ハカセといふ生物ほど知っている人々もまたいないのだけど。

本作「ハカセといふ生物」は、現役の生物学博士が、現役の生物学博士たち--を含んだ研究者たち--を四コマ漫画に著した一冊。

Synopsis
紹介した多様なキャラと北大路柿生との
交流を通し得られたデータを用いて
我々は四コマ漫画という手法により
ハカセや研究業界を端的に示した。

「末は博士か大臣か」という言葉がある。博士級、大臣級に事実からかけはなれた言葉だ。大臣はとにかく博士はこの国だけで十万人を超えるし、どちらも末どころか出発点にすぎないのから。

科学と人間の不協和音」(後日書評予定)によると、この国で研究職に携わっている人口は80万人(博士以外も含む)。弁護士は医師はおろか、義務教育の教諭よりも多い。その数を考えれば小説や漫画やドラマでこれらの職が取り上げられる機会はずっと多そうなのにそうなっていないのはなぜなのだろうか。

「ふつうの人には難易度高杉」?そんなことはない。確かにもう5年も余計に学校で過ごすのは時間的にも金銭的にも楽なことではないけれど、しかしその労さえ厭わなければ「誰にでもなれる」ものと断言してしまってもよいだろう。その「誰にでもなれる」世界を漫画家した本作ともなれば、「誰でも楽しめる」のは論理的帰結として妥当だろう。

誰でも楽しむべきなのである。

実のところ誰もが血税という形で彼らに財を投じているのだし。

とはいえ誰が最も多くの手間と暇を投じているのがハカセたち自身というのも間違いないところ。それを最も楽しむべきはハカセたち自身であるが、本作のような形でたまにはお裾分けしていないと、「『一円も価値を生まないセクター』に幽閉する愚行」とか言われかねない。その意味で、この国の人々は大臣たちに厳しすぎ、博士たちに優しすぎたのかも知れない。「業界内」での業績では他国に全く見劣りしないのに、「業界外へのPR」で大きく見劣りするのは、まだまだこの国では大臣はとにかく「末は博士か」が生きていて、博士という生き物を敬して遠ざける風習が廃れていないのが原因かも知れない。

印税とは別に、博士という生物の生態を広く知らしめた業績に対し、奨学金の弁済ぐらいの評価はあってしかるべきだと一納税者としては思うのだけど…

Dan the Dropout