著者より献本御礼。

一刻も早く読もうとあわてて開封したら、ダンボール糸氏で指を切ってしまった。余談だがその時使ったキズパワーパッドがネ申だったので一応リンク。ネ申な理由はこちらを。本書の著者も一押しである。

またもやsmoothさんに先を越されたことをそのせいにしつつ、本題へ。

本書「成毛眞のスティーブ・ジョブズ超解釈」は、ジョブズ論ではなく人生論。「成毛眞」が釣り針で、「スティーブ・ジョブズ」がルアー。

目次
まえがき なぜ日本にジョブズが生まれなかったのか
第1章 ジョブズの真似をしてはいけない
第2章 マイクロソフトから見えた、本当のジョブズ
第3章 なぜ日本はこんなにも差をつけられてしまったのか
第4章 思い出したい日本の創造性
第5章 成毛流! イノベーションを起こす仕事術
第6章 あなたをクリエイティブな人生に導く7つの習慣
「偶然」を楽しみつくそう
憧れの人物の真似をする
「ゼッタイ」という言葉は胸を張って使え
いい文章をかけば、センスは自然と上がる
食事をなおざりにしている人に、いい仕事はできない
やりたいことは、片っ端からやってみる
「好きになれる」が一番の才能

本書において、Steve Jobsは「狂人」、つまり最も真似るべきでない人として描写されている。

オビより
スティーブ・ジョブズに憧れてはいけない。
なぜなら、それはあなたを成功から遠ざけることになるからだ!

私も著者の見立てに同意するが、本書を「役に立てるべき本」だと見なした場合にはいささかおとなしすぎる表現だと感じる。「狂人」ということはまだ「人」とみなしているわけで、私ならs/狂人/狂/gとしてたと思う。「けものの王」に「人」を付けるのは蛇足というものではないか。

しかしご存知のとおり、Jobsならぬともヒトもまたケモノである。ヒトとケモノに共通する「成功条件」とは一体なんだろうか。

「好きなことをやる」、である。

Steve Jobs
and the only way to do great work is to love what you do.
成毛眞
 そして、本当に何かを好きになったら、徹底的にそれをつづけてみること。それがあなたの人生を豊かにし、時に幸せをもたらせてくれるだろう。
 そのとき思うものだ。たとえジョブズになんかなれなくても、この仕事を好きになってよかった、と。
嫌い好き
食える2.嫌いだけど食える1.好きで食える
食えない3.嫌いで食えない4.好きだけど食えない

ケモノの王でなくとも、ケモノであれば腑に落ちる。

しかしヒトとしての私がそれに異を感じつづけているのもまた事実だ。

なぜ異を感じているかといえば、理由は二つある。

一つは、右上のマトリックスの第一象限「好きで食える」って全員を収容できるほど大きいのかという疑念を払拭できないからだ。すぐに思いつくのは「食えぬなら食わせればいいんじゃね」という方法。つまり右のマトリクスの下半分を生まれる前に消し去るというわけだ。「んなこと無理」と思いきや、すでにそれが可能なことは「弾言」と「働かざるもの、飢えるべからず。」で考察した。だからこの点に関しては実はさほど心配していない。「働かざるもの食えるべからず」の時代があまりに長かったおかげで、まだ納得できない人も多いけれど。

もう一つは、「好きなことってそんな簡単に見つかるのか」ということ。これに関してはJobsも著者も「いやなことはとっととやめて次に行け」以上の策を示していないし、それより冴えたやり方を示した人にまだお目にかかったことはない。

しかし「絶対解決することは保証」していなくとも、「確率的に充分解決が見込まれる」やり方で間に合わせていることは、一見絶対解決が保証できそうな分野にすら見られるではないか。たとえばEthernetの衝突回避。たとえばSSLやSSHの鍵生成。インターネットそれで充分うまく行っているし、問題が起こったらその時解決すればいい。

その意味で"Keep looking, don't settle"というのは「充分よい」アルゴリズムであることを実感している。「よい」アルゴリズムというのは、「誰がやるかはどうでもいい」ということあり、だからこそ人ならぬ電脳でも適用できるのだし、ましてやケモノであるかヒトであるかはどうでもいい。

結局のところ本書の主張というのは、Jobsにしか出来ないことをやろうとするのではなく、Jobsにさえ出来たことをやってみろということに尽きるのかもしれない。

それが、Jobsにすら出来ないことができるようになる最短コースなら。

Dan the Lucky