というわけで早速試してみた。

「いいね!」、うん。

「すごいね?」、うーん。

  • 互換性はDeveloper Previewより明らかに向上している。
  • VMWare Fusion 4で問題なく動く。VMWare Toolsのインストールも今回は無問題。
  • Look and FeelがよりMetro UI寄りに。きんぎょ注意報。
  • FlashやQuickTimeといったプラグインはデスクトップのWebブラウザのみ対応というのは既定路線。これとSnap Viewが組合わさると、少し間抜けなことに。
  • マーケットが使えるようになった。もちろん有料での購入はまだだけど、Cut the Ropeが無料でダウンロードできる。マウスでも結構遊べるなあ。

正直、「Windowsキーで問答無用でメトロUI行き」にはまだ慣れない。Lionで逆になったトラックパッドのスクロール方向よりも違和感は大きい。Lionのセットアップでは、最後にトラックパッドを実際に操作させて手続きが完了させたり、「今までどおり」の向きにPreferencesで設定しなおせたりと、Appleも移行にかなり気配りしていたけど、Windowsキーの役割変更とスタートメニューの廃止にもそういう気配りが欲しい。

その点を除けば、「これが製品版です」と言われても納得できる出来。Mountain Lionもそうだけど、最近のOS評価版ってそこで生活できるレベル。

ただし、以上はデスクトップOSとして見た場合の話。

Windows 8は、タブレットOSでもある。

そのことに気をつけて以下のビデオを見ると、不安にかられる。

一カ所も、ポートレートモードの画面が登場しないのだ。

タブレットそのものは登場するのに。

"Windows 8 Landscape Mode"で検索すると、以下のビデオが見つかった。

Developer Preview 段階でのビデオだが、「一応」モード切り替えには対応してはいる。でも切り替えはiPadほどスムーズじゃないし、タブレットの画面が16:9ということもあって縦に長過ぎる上、Metro UIなTwitterクライアントであるTweet-o-ramaの情報密度はタブレットというよりスマートフォン程度で、画面の使い方が贅沢過ぎに見えて仕方がない。

404 Blog Not Found:Kindle Fireがいまいち燃えない3つの理由
iPad 以外の Tablet が軒並み討ち死にしているのは、価格もさることながら、何も考えずに採用したワイド画面も大きいのではなかろうか。PCの世界で画面のワイド化を推進したのは Apple だが、そんな Apple がなぜクラシカルな768x1024を採用したことに誰も注意を払わなかったのか? Jony Ive が初代iPadを紹介するにあたって"There's no up there is no down. There's no right way or wrong way of holding it"と言っていたのに、誰も真剣に耳を傾けなかったのだろうか?

iPadをある程度使い込んだら理解できるが、タブレットではポートレートモードの方がランドスケープモードより遥かに多用される。「しかたなく」90度向きを変えるのは、動画など横長のコンテンツを扱うときぐらいで、そうでないときには縦長。そのために初代iPadにはわざわざ回転ロックボタンが付いていた。これを「音声オフボタン」にしたらユーザーの総スカンを食って、現在では「ロックボタン」は設定でどちらの機能も持たせられるようにしてある。

この点一つとっても、Apple以外のタブレットベンダーがいかにタブレットの特性というものを分かっていないかがわかる。いやロックボタンの一件に見られるように、Appleですら充分には理解していなかった。

しかしAppleは、もうデベロッパーではなくユーザーに何が正しいかを教わることができる。ただでさえ二年以上のビハインドが、これでさらに広がる。

で、Appleがユーザーから教わった最大の教訓は、何か?

タブレットは、大きなスマートフォンでもなければ小さなパソコンでもないということである。

iOSの変遷を見るとそれがよくわかる。ロックボタンの一件に見られるように、Appleとて一度はUIを「統合」しようとしたが、ユーザーはそれにはっきりとNOを示した。だからiOSでは、3→4→5とバージョンが上がるごとに、iPadとiPhoneのUIの差異は実は大きくなっている。たとえばSafariの「タブ」は、iOS5で「パソコン的」な「ふつう」のタブなったのにiPhoneでは「画面縮小表示のカルーセル」のままだ。だからといってウィンドウの数まで「パソコン的」にしなかったのはこれまた当然のこと。

こうした「当然すぎる無意識」を、まだ競合他者は理解していない。頭ではわかっていても、手では。

本田雅一のクロスオーバーデジタル:PCとスマートデバイスの融合の中で繰り広げられる、新たな“OS戦争” (1/2) - ITmedia +D モバイル
それは、“PCとタブレットが、どのように融合していくか”である。これはパーソナルコンピューティング(個人のコンピュータ活用)について、MicrosoftとAppleが、それぞれどのような着地点を探そうとしているか? という疑問に置き換えてもいい。

Apple、いやAppleにユーザーが突きつけた答えは、明らかだ。

統合はするが、融合はしない。

同じ公道を走るからといって、原チャリのハンドルをステアリングホイールにするか?あるいは自家用車のステアリングホイールをジョイスティックにするか?

Metro UIは「ユニバーサルUI」の実装としては、現状で最高だと思う。小は(今は亡き)Zune HDから大はSurfaceまで同じUIで行くのであれば、あれしか私にも思いつかない。

しかしユニバーサルUIという考えそのものがはたして正しいのだろうか?

答えはいずれユーザーが出す。

だから現iPadユーザーとして、未来のWindowsタブレットユーザー候補として、これだけは伝えておきたい。

タブレットのUIは、基本ポートレート時々ランドスケープで設計すべきであると。

Snapなんてしてる場合じゃないよ、まぢで。

Dan the Man with Too Many Gadgets to Play With