全8巻を大人買い。
なんてこったい。
この作品を、連載完了まで知らなかったなんて。
木々津克久、すごい。
漫画、すごい。
漫画は、物語は、ついにこれほどの高みにたどり着いたのか。
人類には早すぎるかもしれないが、まあ、いい。
人類には、二種類いるのだから。本作を読んだ者と、読んでいない者と。
作者はどっち?どっちでもない。ネ申なのだから。
本作「フランケン・ふらん」は、血湧き肉踊るハートフルメディカルハードSFコメディマンガ。
以上。と言いたいところだが、メディカルだけあって、「使用上の注意」を書いておかないと厄事法にひっかかり兼ねないので蛇足しておくと…
- 血湧き肉踊る
- 比喩ではありません。
- ハートフル
- 「ハート」は「心」よりも「心臓」よりです。
- メディカル
- ハードSF
- コメディ
- マンガ
- ここは看板に偽りございません。文字通りの意味となります。
ということになる。一言でいうと「グロ注意」。絵のグロさなんて物語のグロさに比べて可愛いもん、いや「もん」抜きで可愛いのだけど。ましてや真実のグロさに比べれば。
本作は一部例外を除いて一話完結なのだけど、どのエピソードにも共通する「通底不協和音」が、グロテスクとはいったい何なのかという「メタグロ」。「絵空事より現実の方がよっぽどグロテスク」と糾弾する作品は決して少なくないし、少なくないゆえ中二病的駄作に終わってしまうものも少ないのだが、それを貫き通せば忘れ難き傑作となるのは、去年「魔法少女まどか☆マギカ」で目にした通り。しかし、本作は感動を飛び越えて笑ってしまうのだ。なんだか脳が電気あんまされてるみたいな感じ。
十分高度に発達したホラーはコメディと見分けがつかない。
そういう「ホラーコメディ」は、本作がはじめてというわけでもなければ漫画しかないというわけでもない。日本には筒井康隆という神がいるし、吾妻ひでおという巨匠もいる。唐沢なをきもそれに連なるだろう。
しかし本作がすごいのは、「ギャグ」でなく「ハートフル」なところ。この両者の違い、なんとも説明しにくいのだが、前者は「自分を笑い殺し」て楽しむのに、後者は「自分を笑い生かして」楽しむとでもいえばいいのか…だめだ。たとえようがない。この「いくら笑っても死ねない」感覚というのは、これまでの作品では感じたことがないのだから。
なぜそうなのかといえば、やはり本作がマンガであり、本作の絵が「ニュートラル」だからなのだと思う。筒井のように小説だと、(頭の中で)絵にするのは読者の作業で、そうである以上読者の脳内描写力の制限をまぬがれない。そして読者がまだ「笑い生かされてた」センセーションを知らない以上、どうしても「笑い殺し」になってしまう。そして吾妻にせよ唐沢にせよ「マンガ」絵であることで、「この作品はフィクションです。実在の人物、団体、事件などにはいっさい関係ありません」ということが一目でわかる構造になってる。「ホスピタル」ではこの文言そのものもネタとして登場するけど。
しかし本作の絵は、写実的でデフォルメ抜きの劇画絵。それも上手い。「進撃の巨人」や「BLACK BRAIN」の画力不足をお嘆きの方、ご安心を。しかしそれ以上に重要なのが、「適度に」ということ。これが古屋兎丸ぐらい上手だと、話そっちのけで絵に見蕩れてしまう。
本作の絵は、あくまで話を読ませるための絵なのだから。
にも関わらず、各キャラが立っているのだから度し難い。ヴェロニカ、ふらん、ガブリールの三姉妹はもちろんのこと、沖田やアドレアやFSMに至るまで。こう話も絵もうまいとあっては、もう出るのはため息ばかり。仮に私が漫画家を目指していたとしたら、本作に出会ったとたんホヤになるしかないではないかっ
しかも余力を残しての「最終回」。なぜ括弧付きかというと、どう見ても不人気による打ち切りとか燃え尽きとかが完結の理由ではないから。
どうみても、あれは「最終回」というネタで一作ものにしたというだけでしょ?
そう。ネタ。
どんなに「シリアス」な話でさえ、Undoできるのであれば「ネタ」になる。どれほど瀕死の重傷を負っても、ふらんちゃんの術式にかかれば君の魂はソウルジェムに入っているに等しい。ふらん自身、自らに何度もその術式を適用している。「シリアス」は「死リアス」に等しい。不死に等しい彼らが不死リアスになるのもある意味必然なのだ。
その「不死の探求こそ」が、「枯れ果てた宇宙を引き渡されても困るよね」の理由でそれゆえキュウべえは今日もどこかで営業しているはずなのだけど、それもきっちりネタにしているのだから参った降参。
人一人の命は地球より重いって
じっさいそうなんですよ〜〜〜
[幾何級数的に増える]泉屋洋華は地球には荷が重い
これをどう解決したか。「すべての魔女を、生まれる前に消し去る」より冴えたやり方でしたよ、ええ。
というわけで、「完結」もネタだと信じたい。次回作をお待ちしております。斑木三姉妹に再び合うためなら、たとえアドレアに食われても構いませんので。
食いっぱぐれないように久宝さん化されるのだけはちょっと勘弁願いたいけど。
というわけで、最後に一読者として一言。
本作を読まずに生けるか!
Dan the "Patient" Thereof
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