文庫版あとがきとオビを担当したので紹介です。

解説より

発明と発見の間、論理と物理の間

小飼弾

こんな本が欲しかった。アルゴリズムを通してみた人類の発展史。まさか前世紀の最後の年に原著が上梓され、その一年後には訳出されていたとは。その十年後に文庫収録にあたって解説を仰せつかるとは光栄以上に恐縮のきわみである。

にもかかわらず告白すると、私は本書をひもとく前に邦題でつっかかってしまった。

「史上最大の『発明』アルゴリズム」?あれ、アルゴリズムって「発見」ではなかったの?

本書の原題は "The Advent of the Algorithm" 、直訳すると「アルゴリズム降臨」とでもなるだろうか。確かに原題には「発明」という言葉は入っていない。なぜ「発明」に引っかかるかといえば、数学者たちはそれを「発見」と呼んでも「発明」とは呼ばないからだ。

この原稿を書いているiMacに標準搭載されている大辞泉は、「発明」と「発見」を以下のとおり定義している。

発明: 今までなかったものを新たに考え出すこと

発見: まだ知られていなかったものを見つけ出すこと

別の言い方をすれば、人類によって見つけられようがなかろうがこの世に存在するのが発見されるべきものであり、人類の手によって(少なくとも人類が知る限り)はじめてこの世に存在するようになるものが発明されるべきものだということである。その意味でテクネシウムやプロメシウム、超ウラン元素といった安定同位体が存在しない元素は興味深い。当初は物理学者たちによって「発明」されたのだが、その多くは新たに恒星などで「発見」されている。

それではなぜ数学者たちは自らの新たな知見を「発明」と呼ばずに「発見」と呼ぶのだろうか?

続きは本書で!

Dan the Dream(er|ed)