
ぐぬぬ…
時事ドットコム:夏の電力0.4%不足=関電は2桁、北海道・九州も−節電不可避・各社需給見通し電力各社が政府に提出した今夏の需給見通しによると、原発が再稼働せず、2010年並みの猛暑になった場合、電力需要が高まる8月に全国で0.4%の電力不足が生じると推定。特に、原発11基を抱える関西電力では16.3%の不足を見込む。
まさか被災地たる東日本ではなく西日本でそうなるとは。
「実際は足りる」という意見も散見されるけど、仮にそうだとしても、原発依存率が最も高い関西電力が、原発なしでは最も足りなくなるというのはつじつまが合っている。しかしそれ以上に、再稼動の前に関西電力が震災に対してどのような対策をとったのか、いわゆる「ストレステスト」の中身がほとんど伝わってこないのがストレスなので少し調べてみた。
で、調べてみたら率直なところ少し不安は増してしまった。
これ、手順間違えたらスリーマイルにならない?
震災後どのような対策がなされた--ことになっている--かは、電気事業連合会がまとめた以下の資料がある。
で、大飯を含め関電で用いられている加圧水型原子炉(PWR)では、いざとなったら以下のようにして炉を冷やすのだという。

この図で最も重要なのは、右上の「2次系蒸気を大気放出」だろう。要するに「ベント」なのだが、沸騰水型(BWR)に比べて有利なのは、蒸気発生器からの漏れがない限り放射性物質が漏れないこと。
加圧水型原子炉 - Wikipedia一次冷却系と二次冷却系という分離された冷却系を有する原子炉では、放射性物質を一次冷却系に閉じこめることが出来る為、沸騰水型原子炉 (BWR) のようにタービン建屋を遮蔽する必要が無く、タービン・復水器が汚染されにくいため保守時の安全性でも有利である
その有利さがここでも反映されている形になっている、のだけれども、スリーマイル島の事故はこの二次冷却系に端を発していたことをこれを見て思い出した。
スリーマイル島原子力発電所事故 - Wikipedia2次系の脱塩塔のイオン交換樹脂を再生するために移送する作業が続けられていたが、この移送鞄管に樹脂が詰まり、作業は難航していた。この時に、樹脂移送用の水が、弁等を制御する計装用空気系に混入したために異常を検知した脱塩塔出入口の弁が閉じ、この結果主給水ポンプが停止し、ほとんど同時にタービンが停止した。 二次冷却水の給水ポンプが止まったため、蒸気発生器への二次冷却水の供給が行われず、除熱が出来ないことになり、一次冷却系を含む炉心の圧力が上昇し加圧器逃し安全弁が開いた。
ざっくりまとめると
- 二次冷却系が目詰まり
- 一次冷却系が過熱
- 一次冷却系の加圧器の逃し安全弁が開く
- 一次冷却系の圧力が下がっても、安全弁開きっぱなし
- にも関わらず、誤判断により非常用炉心冷却装置(ECCS)を手動停止
- 一字冷却用の水を喪失、原子炉空焚き
- メルトダウン
ということになる。
そうはならないということを私のような素人に説得するために一番よいのは、実際にこの緊急冷却法をテストすることだろう。しかしそれではテストそのものがリスクになる。蒸気発生器というのは加圧水型原子炉の要であると同時にアキレス腱でもあって、実際美浜発電所二号機は一次系の冷却水が二次系に漏れる事故を起こしている。
美浜発電所 - Wikipedia2号機の蒸気発生器の伝熱管1本が破断し、原子炉が自動停止、緊急炉心冷却装置(ECCS)が作動する事故が発生した
ストレステストというのであれば、本当にこれくらいストレスをかけないと枕を高くして眠れないと思うのだが、試験中に事故を起こしたともなればそれこそスリーマイルどころかチェルノブイリの二の舞になってしまう。
それではこのレベルのストレステストをどんな原子炉でもかけられないのかというと、それに相当する以上のことをやってのけた炉はある。茨城県大洗にある高温工学試験研究炉(HTTR)がそれで、全電源喪失どころか冷却喪失まで実際に試験している。
どうしてそうなるのかはWebページの説明でもある程度つかめるが、それでも不満なら見学に行けば実際に説明してくれる。見学者がある程度予習を済ませている人が多いのか、しばしば説明抜きで専門用語を使うのには苦笑してしまったけど(FPじゃなくて「核分裂生成物」って言った方がいいですよ)。あと、今日日WebページでFrame使ってるってのも…これじゃ要所要所をpermalinkしにくくてしょうがない。
だからといって今から固有安全炉を建てようにも今年の夏には間に合わないし、それ以前にそんな余裕があったらLNG発電所を大増産しているだろうし、どのみち今となっては後の祭りではあるのだけれども。
いずれにせよ、「大飯はスリーマイルにもチェルノブイリにも福島第一にもならない」という説明責任ぐらいは求められてもいいはずなのだが、「何がどうなった、何をどうした」というニュースより「誰が何言った」というニュースばっかりなことに呆れている。この件に関しては No news is good news の原則は成り立たないよね?
Dan the Reacting Blogger
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