出版社より献本御礼。
P. 237 おわりに本書はAV女優でもしようかな?と思っている女性や、娘を持つ親達に読んでほしい。
私はまさに後者に該当するのだが、まったくもってその通り。
これだけ「おいしくない」仕事、滅多にないのではないか。
本書「職業としてのAV女優」は、就活入門ではない。本書はAV女優になった後の話である。どれくらい稼げるのか。どれくらい続けられるのか。そして辞めた後どうなるのか…
その実態は、私の想像以上に「市場成熟後の普通の人気稼業」であった。
オビより日当3万円、倍率25倍、年齢不問
つまり、漫画家や作家と同じ。希望者は山ほどおり、デビューしても持続可能性に対する保証は一切ない。金の必要に迫られてやむにやまれずやるものではなく、「才能」に恵まれたものが「努力」を続けてなんぼの世界。
しかも、その「なんぼ」は年々下がっている。
これは肉体にも知能にも恵まれた一例だが、これですら「2005年デビュー」であるがゆえ「幸運な事例」であることが本書から読み解ける。
P. 87〈AV成熟後(06年〜現在)のAV女優の傾向〉
- セックス好き
- 企画単体、企画は応募女性が過半数。
- セックス好き、性的な好奇心旺盛。
- 高学歴化、社会的。一流大学、一流企業、現役OL、家庭人あなどなど、知的で清楚な美人、さらにスタイル抜群。また中年女性の増加。地方出身者は相変わらず多し。
- 非消費傾向、無駄遣いなどしない。遊ばない、ブランド物は買わない。
- 仕事をするのは生活のため。またセックスを楽しむため。人生はじめてのアウトサイダー体験を楽しんでいる。バレたらバレたで、OK。
- 素直で性格がいい、協調性がある。
- 彼氏なし、が増加
では2006年に何があったのか?それは本書の読んでのお楽しみ、なのであるが、それがもたらした結果といえば、こんな感じである。
河本準一×紅音ほたる「AV撮影現場の裏話」 | 世界は数字で出来ている紅音ほたる「私の場合は、水芸もあるんで、ポカリスエットを一日に12Lくらい飲んでるんですよ」
紅音ほたる「メーカーもスゴイ限られてたのが一気に増えて、事務所も一気に増えたんですよ。女優さんもスゴイ増えたんで。単体女優さんが高いわけじゃなくて。私の場合は、企画とド企画の間をずっとさまよって仕事してたんで、一番安いときで3万円くらいですよ」
紅音ほたる「一番いったときでも、80万円は超えないです」
才能があって努力しても金銭的に報われないという点で、むしろ(巷で言われる)アニメーターのようではないか。
アニメーターといえば、現在ではアダルトアニメも存在するのはご存知の通り。本書で一番不満だったのはそこで、「異業種からの侵略」に対する考察も欲しかった。AV女優がAVキャラに全て置き換えられる近未来というのは、歌手がヴォーカロイドに全て置き換えられる近未来と同様ありえなさそうではあるけれど、それでも初音ミクが歌にもたらしたのと同様の変化を、阿久女イクがポルノヴィデオにもたらす可能性は大いにある。あるいはUAVが戦場にもたらす可能性、か。
生身の人間を過酷な現場から遠ざければ遠ざけるほど、現場は残された者にとってより過酷になる、という可能性。「プロジェクト・ゼロ」においてセクサロイドを後押しするのは、日本初の女性総理大臣という設定だった。
しかし未来を待たずして、現状はかくも厳しい。
それがわかるだけでも、本書をひもとくに充分な理由である。
Dan the Father of Two
中身が中身だけに難しいけど、世界と比べて、どの程度のレベルなのかを分析してほしいものだ。