出版社より献本御礼。

ひゃー、たまげた!

絶対値としては、iOS6の面白地図を目の当たりにしたのと同じぐらい。

もちろん符号の向きは逆。

ここまで明かしてくれますか。

まだ20世紀、Webの黎明期に「未来にある普通のもの」で、今や「未来にある」抜きで普通のものとなった、Web地図サービスがどうやって動いているかを。

本書「Mapion・日本一の地図システムの作り方」は、日本一早く地図のWeb化に取り組んで来た企業、Mapionの中の人々自身による、手口公開。およそプログラマーであることを自任する者であれば、これ以上の紹介は不要なはずである。これほど一般に目にし手に触れる情報処理総合格闘技は他になく、他にない以上心を動かされずにはすまないのだから。その内なる声に素直に従おう。「あれ?そうだった?」という経路を経ても、「やっぱりそうだった!」という経路を経ても、感動という目的地は一緒だ。

本書の日本一は伊達じゃない。地図サービスを舐めてかかったらCEO自ら詫びを入れる羽目になった、時価総額世界一の会社も謝罪文でわざわざ著者らのアプリを紹介しているぐらいだ。

アップル - マップについてのTim Cookからのメッセージ
私たちがマップの改良に取り組んでいる間、皆様にはApp Storeから「地図マピオン」、「地図 Yahoo!ロコ」などの地図アプリケーションをダウンロードしていただけます。Googleマップのウェブサイトにアクセスして、そのアイコンをホーム画面に作成し、マップを使うこともできます。

一読者かつ一オープンソースプログラマーとして一番驚きだったのは、オープンソースソフトウェアが脇役としてではなく主役として登場したこと。「OSはLinux」でとか「WebサーバーはApacheで」とかというのであれば「そりゃそうだ」といったところだが、データから地図を生成するサービスの根幹にあたる部分までそうだったというのは実に意外だった。もっとプロプライエタリな世界だと何の根拠もなく思っていた。

しかしもちろん100%オープンソースで出来る世界というわけでもない。地図ほどご当地の事情localityが強いサービスもないのだ。シーボルト事件を挙げるまでもなく、国と時代が変われば秘中の秘という代物。なにをどう地図に載せるかに、一般論は適用できない。謝罪文の固有名詞を、各国にあわせて変更しなければならないほどに。

Apple - A letter from Tim Cook on Maps
While we’re improving Maps, you can try alternatives by downloading map apps from the App Store like Bing, MapQuest and Waze, or use Google or Nokia maps by going to their websites and creating an icon on your home screen to their web app.

それほど貴重だった情報が、今や文字通りこの国の皆の手の中にある。

これが感動せずにいられるか。

プログラマーであれば map というのは名詞であるとと同時に動詞でもあることをプログラミングを通じて知っているはずだ。何かと何かを対応づけること。これほど抽象的な概念の名詞が「地図」というところに凄みを感じないか?極論してしまえば、すべての情報処理は mapping なのであり、その代表が地図なのだ。優れたコードだけでもダメ、優れたデータだけでもダメ。両方揃って、はじめて「ふつう」に使えるようになる。地図こそ、情報処理のアルファにしてオメガなのである。

そのαからωに至る、βからψという道程が、本書なのである。

これを手に取らずにいられるか。

Dan the Bibliomapper