Dangen by Dan Kogai - binWord Inc.

もう明けてから6日目に突入しているではありませんか。その間私はといえば、熱出すわ蕁麻疹出すわで寝正月もいいところ。リハビリを兼ねてentryというかreply。

明けましておめでとうございます(新春、マクロのお話) | isologue
つまり、「なぜ、14兆円の消費を増やすことが難しいか」といえば、(国債の売却や貸しはがしが必要だからではなく)、消費というのは「欲しい」と思うものを消費するものであって、他人から強制されて買わせるということは難しいから、ということに尽きると思います。

磯崎さんの「年賀状」ですが、ここが引っかかったので。

たった14兆円使うの難しいですって?

私にくださいな。サクって使って差し上げますよ。

といっても全員にそのまま配っちゃうだけですが。さすがに「たった11万2000円」を使い切れないという方はいらっしゃらないかと。

簡単な思考実験をしてみましょう。100人のムラに100億円あったとします。このムラの人々は、各自1000万もあればほしいものを全て手に入れることが出来ますが、それより少ない金額は全て使ってしまいます。ただし99人は100万円しか持ってなくて、1人が残り99億とんで100万円を持っています。ここで問題です。

Q.
  1. 当初の状態で消費されるのはいくら?
  2. 99億とんで100万円持っている1人が9億9000万を99人のムラビトに均等に配ったら、消費されるのはいくら?
A.
  1. 1000+99*100 = 10,900万円
  2. 1000*100 = 100,000万円

1億とんで900万円が、10億円。消費は10倍に伸びたことになります。

もちろんこのムラビトたちは過度に単純化された人々で、実際のところ持っているカネが増えればほしいものもある程度は増えるのでこうは行きませんが、現実問題として、カネがどう使われているかは、総額でいくらあるか以上に、それがどのように分布しているかに大きく左右されるというのはこれでお分かりいただけるかと。実際高所得者ほど使わずに貯めてしまうことは、「ワープアのあなたが消費税アップに断固反対するべき理由」でも以前示しました。

もし100人のムラが、1000万円を持っている99人と90億1000万円持っている1人という状態であれば、

現代においては、個人の消費需要や企業の投資需要は、非常にバラエティに富んだ多様なニーズから成り立っており、それは、ビジネスの現場(レストランとか家電量販店とか広告代理店とかSNSの会社とか、その他様々な)の人がものすごい工夫をしてはじめて喚起できるものがほとんどであって

というのも納得ですが、現実により近いのは前者の方であって後者ではない。「買いたいものがないから買わない」のではなく「買えないから買わない」だけでしょう。

私が「リフレ」という言葉に懐疑的なのは、そこに理由があります。

"Stay hungry, stay foolish"政策と読んだら天罰が下っちゃいそうですが、実際問題生活保護のダウングレードも消費税増税も、消費性向の高い人々から低い人々への「逆再配分」として機能するのは外れようがない。

それでは「1000万円を持っている99人と90億1000万円持っている1人」という状態はありえないのか?私がまだ絶望していないのは、それがありえると思っているから。

たとえば、ブロードバンドインターネット。現在の拙宅は100Mbpsが月1,260円(消費税上がったら1,320円?)で使えるわけですが、これくらいになるとさすがに「もっと速く」という欲求はほぼなくなります。妻の実家はこれよりさらに速いのですが、そのためにわざわざ別回線を引こうとは思いません。私の広帯域欲は、8年前に100Mbpsが成就した時点で終わったようです。

「まとめていくら」ではなく「それぞれなんぼ」でこういったことを突き詰めてけば、「インフレターゲット何%」よりずっとわかりやすい目標を立てられませんか?

そのためにクリアーしておきたいのが、エネルギー。エネ放題よりパケ放題が先に来たのは、未来学者たちが一番外した目標かも知れません。なぜ我が家の電気代は、ケータイを含めた通信代より高いのか(苦笑)。しかしパケ放題が成就したように、エネ放題が成就しない物理学的理由というのは実は見当たらないのです。

このあたりは「弾言」でも「働かざるもの、飢えるべからず。」でも繰り返し主張していることではあるのですが、

財政政策や金融政策の必要性を説く人たちも、いつまでもそうした「薬漬け」になっているのがいい状態だとは決して思っていないでしょうから、基本的には「現場」の人たちが「新しい需要」をガンガン掘り起こすことが重要だと思います。

と主張する前に、「古い需要」をまずきちんと満たし切る方が理解も実行もしやすいのではないかという思いを、それから一時的に遠ざかったように見える昨今むしろ強めた正月でした。今年もよろしくお願いします。

Dan the Accidental 1%