Late 2010, Mid 2011 に引き続き、Mid 2013を引き続きまた勝ってしまった、もとい買ってしまったので。

いや、負けてしまった、というべきか。

  • 今回購入したのは、13-inch/Core i7/US Keyboard/8GB RAM/512GB SSD 。
    Model Name:	MacBook Air
      Model Identifier:	MacBookAir6,2
      Processor Name:	Intel Core i7
      Processor Speed:	1.7 GHz
      Number of Processors:	1
      Total Number of Cores:	2
      L2 Cache (per Core):	256 KB
      L3 Cache:	4 MB
      Memory:	8 GB
      Boot ROM Version:	MBA61.0099.B00
      SMC Version (system):	2.13f5
    
    注文してから Apple Store で現物を確認したのだが、店頭で買える吊るしの Core i5/4GB RAM/256GB SSDでもそれまでの使い方であれば「大丈夫、問題ない」であった。それでも「一番いいのを頼む」してしまったのは、円安値上げ後にも関わらず、それでも予算に収まってしまったことと、SSDが見かけ上安かったというのが大きい。AppleのBTOはメモリーやストレージで吹っかける印象があるのだが、+30,900円というのは、巷のSATA3の512GBと256GBの差額程度で、SonyとDellはどちらも差額が35,000円で、しかも後者はPCI Expressではなく既存のSATA3であったことを考えると値ごろ感は高い。
  • あちこちですでにレポートされているとおり、そのSSDの爆速ぶりはすさまじい。

    右はVMWare Fusionのサスペンド時にメモリーの内容をストレージに落とす時に観測したものだが、700MB/sを超えている。速いだろ…これ、(その中では一番いいのとはいえ)Macのエントリーモデルなんだぜ?

  • 速いといえばもちろんWifiも。あわせて Airport Express も購入したのだが、右はVMWare Fusionの仮想VMをコピーしている時に観測したもの。USB 2.0の外付けHDDより速い。MacBook AirはエントリーモデルだけあってMIMOアンテナはずっと2本なのだが、MacBook Proのアンテナ3本より速く、しかもベースステーション側のアンテナが余ることもあってか、その間にたとえばiPadでアプリをアップデートしても全く遅くならない。
  • Retina Display がないことを残念がる声も多いけれども、率直なところ、デスクトップである限りそれは Nice-to-have ではあるけれど Must-have にはならないのでは、という思いを、 Windows 8 Tablets を物色して新たにしている。11-13インチにフルチンDというのはデスクトップには収まりが悪すぎる。タブレットよりも倍は目と離して使うのに、字が細かすぎて私の視力ではよく読めないし、ましてや正しい位置をポイントするのは、ただでさえMacに劣るトラックパッドでも難しいのに、タッチでそれをやるともなると絶望的。そして残念ながら、デスクトップ抜きで純タブレットとして使うには、今のところWindows 8のソフトウェア資産はとぼしすぎるし、デスクトップなしではできないことが多すぎるし、そしてタッチ精度が悪すぎる。1,2世代前のAndroidタブレットのような感じだ。ディスプレイのスペックはいくらでも上げられるが、我々の目と手の精度は変えようがないことにいい加減気が付いて欲しいのだが…
  • 追記: Retina Displayがいかに重いかは、MacBook Pro Retina Display 13と比較しても実感できる。店頭デモ機でQuick TimeのScreen Recordingをしてみたところ、14fps程度だったが、本機は38.15fps。Apple Store店頭の、Core i5なデモ機でも35fpsと30fpsを上回っていた。もしかして、次の世代の Pro Retina 13 は本機と同じIntel HD Graphics 5000ではなく、Iris Pro 5200を搭載するかも知れない。ディスクリートGPUはかなり難しそうだし…
  • 追記: お、AirPlay Mirroringの実装も少し変わってる。2011では解像度をApple TVに合わせると、解像度が1440x810のレターボックス表示になったのに対して、2013だと解像度が1980x1080になって、Mac側では縮小表示されるようになった。
  • 入手後まだ1日ということもあって、省電力に関してはまだわからない。が、それで興味深いことを一つ発見。

    上が2013、下が2011の Energy Saver 設定なのだが、[Computer Sleep]が消えている。

  • つまり、いつどのようにどれくらい寝るのかは Mac 任せということだ。

    おそらくそれでいいのだろう。今回鳴り物入りで登場した Haswell の最大の特徴は、省電力モードの豊富さとのことだが、そうなるとむしろユーザーの側で何をどれだけどう細かく設定するかはわかりづらくなる。きめ細かい省電力はiOSデバイスでは常識だが、そのiOSデバイスも設定はほとんどない。放っとけば勝手に寝るし、その間もメッセージは受け付けるし、すぐに寝せたければロックボタンを押すだけだ。このロックボタンをクラムシェルのリッドに置き換えれば、今回の MacBook Air になるという感じ。放っとけば寝るし、蓋を閉じればすぐ寝るし、そして蓋を空ければすぐ目覚める。以前にあった「数秒の間」はどこかに行ってしまった。

    そしてMacBook Airは僕にとっての神マシンとなった【湯川鶴章】 | TechWave
    職業柄、僕が最も重視するのが、この一瞬で動き出すというところだ。ふとした拍子に文章のアイデアが浮かぶ。それをすぐに書き留めたい。立ち上がりは一瞬でなければだめなのだ。数秒かかればアイデアが途切れてしまうし、数分かかれば執筆意欲までなくなってしまう。

    その数秒の間を節約するために、それまではpmsetでいじったりするtipsがWebには山ほど上がっているが、そういったチューニングは無用になったといってよさそうだ。

  • 追記: ACアダプターを外して、まず二時間ほどVMWare Fusionを使い(Windows Updateでファンが回った:)、その後2時ほど書き物をして、3時間ほどビデオを見て、そしてもう三時間ほど今度はAirplayサーバーにしてApple TVでビデオを見るという使い方をしてみた。合計10時間後、バッテリーの残量30%、[06:04 Remains]というところで私の方が根を上げた。iOSデバイスにはじめて勝ったMacじゃまいか?
  • しかし、本当に嬉しかったのは、何が変わったかではなく、何が変わっていないか、なのかも知れない。

    Thunderboltケーブル一本で引っ越せて、しかも20分後には今まで通りの環境がそこにある。競合他者に一番真似してほしいのに、一番真似してくれないのがこれである。引っ越しの労苦こそ、新品への買い替えを控えてしまう理由の最大ではないか。Microsoftは新OS開発の1/10でも、移行ツールに投資するべきではなかったか?Appleでさえ、Windowsからの移行アシスタントを用意しているというのに。

  • 移行といえば、バックアップの移行も忘れるわけには行かない。この点でも Mac は楽で、引っ越し前の Time Machine バックアップはそのまま引き継げる。「移行しますか?」というダイアログにそのまま従ってもよいのだが、初期バックアップは時間がかかるのでそこは「あとで」を選択してから、手動で引き継ぎの設定を行った。といっても、以降前のマシンに対応するバックアップファイル(sparse bundle)を移行後の名前にリネームしてから、以下のコマンドを発行しただけ。
    % sudo tmutil inheritbackup /Volumes/dan-tcg4/dan-mba62.sparsebundle 
    Password:
    Attaching disk image...
    ** /dev/rdisk2s2 (NO WRITE)
       Executing fsck_hfs (version diskdev_cmds-557.3.1~1).
    QUICKCHECK ONLY; FILESYSTEM CLEAN
    Claiming disk image for machine...
    Ejecting disk image...
    
  • 残念ながらPCI ExpressなSSDも802.11acも、多数の細かいファイルのやりとりが絡む初期バックアップまでは高速化してくれない。私の例では差分は12GB程度であったが、四時間以上かかった。前の晩にセットしておいて寝て待つのがよいだろう。
  • Time Capsuleも、SSD化したら速くなるのだろうか?人柱緩募:-p

こうして見ると、今回の MacBook Air に限らず、Apple製品がいかに「楽しく」以上に「楽に」に気遣ってデザインされているかがよくわかる。世間の耳目は前者ばかり目がいくし、それに競合他者が釣られまくっているのは、ソフトウェアもろくに改善しないままディスプレイを高解像度化していること一つとっても痛々しいほど伝わってくるが、一ユーザーとして本当にパクって欲しいのは後者なのだ。

Apple - iOS 7. Coming this fall. - YouTube 03:28
While iOS 7 is completely new, it is important to us to make it instantly familiar.

「一瞬で慣れる」。そのためにはユーザーに製品を慣らすのではなく、製品をユーザーにならさなければならない。そのユーザーというのは、パソコンの場合すでに旧製品に慣れ親しんだユーザー。慣熟というのはユーザーにとっては既得権で、メーカーにとっては資産なのだ。

新しくなければ、ユーザーは飽きてしまう。しかし新しすぎては、ユーザーは放り投げてしまう。その加減を戦略のレヴェルまで組み込めているのは、Appleぐらいではないか。「今後ともよろしくお願いします」という台詞が製品そのものから伝わってくるのは、同社製品だけだ。

もちろん、その不満の少なさそのものに対する不安はある。

404 Blog Not Found:事実は小説よりbraveなり - 書評 - すばらしい新世界 への感想を、ある読者がこう綴っていた。

アップルの世界は、どっちかというと「1984」よりは「すばらしい新世界」的な統治だなあ、とあらためて思いました

それだ。

Steve Jobs Promises 'Freedom From Porn' In Fiery Email Exchange
Yep, freedom from programs that steal your private data. Freedom from programs that trash your battery. Freedom from porn. Yep, freedom. The times they are a changin', and some traditional PC folks feel like their world is slipping away. It is.

「プライバシーを盗むプログラムからの自由。バッテリーを浪費するプログラムからの自由。ポルノからの自由」。ムスタファ・モンドの台詞そのものではないか。

Designed by Apple in California.

AppleのエコシステムというのはHotel Californiaそのものではないか。

"You can check out anytime you like, but you can never leave."

だからといってチェックアウトしたら、待っているのは Welcome to the Jungle だしなあ。観光にはよくても住むともなるとねえ…

だからこそ、Apple製品のユーザーを信者に例えるのは、言い得て妙だけどそれ以上にミスリーディングだと思う。彼らは--我々は--代価を支払った上でそれ以上のサービスを受けたいだけなのだから。

そしてその代金は、かつてない程下がっている。

チェックアウトする理由が、ますます見つからない…

Dan the "Guest" Thereof