去る6月28日に、拙著「小飼弾「仕組み」進化論」のKindle版が発行されました。
にも関わらず、本日まで本blogでの紹介が遅れたのは、あるイベントの完了を待っていたから。
それが、以下の掲載完了。
- Business Media 誠:小飼弾×松井博、どこへ行く? 帝国化していく企業(1):アップルやマクドナルドは、本当に“悪の帝国”なのか? (1/5)
- Business Media 誠:小飼弾×松井博、どこへ行く? 帝国化していく企業(2):企業帝国の弱点とは? そこで働く人たちの悲哀 (1/5)
- Business Media 誠:小飼弾×松井博、どこへ行く? 帝国化していく企業(3):先進国にとっての労働は「暇つぶし」なのか (1/4)
- Business Media 誠:小飼弾×松井博、どこへ行く? 帝国化していく企業(4):「ベーシックインカム」は人間を幸せにするのか (1/5)
- Business Media 誠:小飼弾×松井博、どこへ行く? 帝国化していく企業(5):壮大な“実験国家”米国から何を学べばいいのか (1/4)
- Business Media 誠:小飼弾×松井博、どこへ行く? 帝国化していく企業(6):学校へ行くメリットが説明できない時代 (1/5)
- Business Media 誠:小飼弾×松井博、どこへ行く? 帝国化していく企業(7):国のチカラが弱くなっている中で、「国籍」に何の意味があるのか (1/4)
インタビューそのものはわずか一日ですが、都合七回に分割せねば掲載できないほどのテーマを、初対面でいきなりぶつけてきた松井博さんの遠慮なき誠意をぜひともご覧いただきたかったのです。
それは、国民国家と企業帝国という、現時点において我々が構築運営している最大の「仕組み」と、それが産み出す問題。同インタビューでも、本書は「種本」の一つとして用いられています。
本書で私が伝えたかった事は、これ。
仕組みを語るとDNAに行き着く! 書評「小飼弾の「仕組み」進化論」 | No Second Life私が感じたのは、これらの本の「仕組み」の「耐えられない軽さ」です。はっきり申し上げて、私にはこれらの本が呼ぶところの「仕組み」がなまぬるいものに感じてならなかったのです
本書が上梓されたのは、2009年3月。リーマンショックの後。東日本大震災の前。
どちらも、「仕組み」というものの「耐えられない軽さ」を津波のごとく流すようなイベントでした。
それから四年。震災から二年。
私が最も驚いているのは、有形の仕組みの壊れ易さと、無形の仕組みの壊れ難さ。
前者は人体であり、堤防であり、原発。
そして後者は精神であり、企業であり、政府。
本書もまた、「仕組みについて考える仕組み」であるがゆえに後者に属します。本書で取り上げた事例を差し替えたい気持ちがないとは言えませんが、それ以上に本書で行った論考が現在もなお有効であることに、著者というより一読者として唖然としています。
対談連載と本記事の間にも、仕組みについて改めて考えさせられる訃報が続きました。金子勇さん、ボーイング777の乗員乗客としてはじめての死者となった二名の高校生、そして東京電力福島第一原子力発電所の吉田昌郎元所長…彼らはいずれも仕組みというものの犠牲者であると同時に、金子氏は仕組みの設計者であり、吉田氏は仕組みの運用者でありました。
彼らのニュースを見た後、改めて本記事を書きながら自分自身の心理という仕組みを顧みて愕然としました。本書の著者であるはずの私でさえ、仕組み自体の物語より、仕組みの不備と戦う人間の物語に心動かされてしまうことに。
冷静かつ冷徹に考えれば、彼らの物語に耳目を注ぐ以上に我々がすべきなのは、彼らの対峙した仕組みに対する再考であるはずです。なぜSFOほどの大空港でもグライドスロープは必須になっていないのか。なぜ10kmしか離れていない福島第二は福島第一にはならなかったのか…
しかし、どうも我々には、仕組みよりも、人格に強く惹かれてしまうという仕組みが組み込まれているようなのです。「だからたかが知事が原発再稼働を阻むのはおかしい」と主張するのは、法理という仕組みを重んじる以上に、心理という仕組みを軽んじているように思えます。前者は我々の努力で改善できても、後者はそうは行かないのですから。
そういった我々の内なる仕組みまで含めて、本書が仕組みというものを考える一助となることとなれば、それに勝るよろこびはありません。
Dan the Author
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