出版社より献本御礼。

なんてぐろい。

なんてきもい。

なんて

いとしい

世界で唯一の寄生虫専用博物館として名高い、公益財団法人目黒寄生虫館。その目黒寄生虫館が監修したのが本書「寄生蟲図鑑」である。寄生虫ファンにはこれ以上の紹介は不要だろう。

よって以下は、寄生虫という存在が、グロテスクで気色悪い、駆除すべき対象としてしか見なしていない方に向けて書かれている。

まずは現実から。

よくこそ世界でただ一冊のビジュアルブックへ
寄生虫に感染するのは人間だけではありません。おそらくすべての動物は寄生虫をもっています。意外に思うかもしれませんが、寄生される動物(宿主といいます)より寄生虫の方が確実に種類が多いのです。単に種類が多いというだけではなく、寄生虫の一生(生活環といいます)も種類によって非常に多彩です。フタゴムシが成熟のためにパートナーをみつけて行う合体、ロイコクロジウムが宿主の貝を鳥に食べられるようにするために取る驚くべき行動、日本海裂頭条虫(サナダムシ)の気の遠くなるほど膨大な産卵数などは、私たちの想像をはるかに超えるのです。

ある意味、寄生虫という生き方は、最も多くの生物に選ばれていると言える以上、生物を礼賛しようとすれば、彼らの生き様から眼を背けることは許されないとも言える。およそ人の想像力など及ばぬ彼らの特異な生活環に魅せられればもちろん、彼らを不倶戴天の敵として撲滅しようと欲すればなおのこと…

日本人でもちょくちょくお尻から顔を出すギョウチュウ(ご幼少のみぎりの私の腹にもいたらしい)、日本からはほぼ姿を消してもおよそ14億人、地球上の5人に1人の腹の中に住むカイチュウを下したとしても、人体の総細胞数60兆を上回る、100兆の腸内細菌とともに我々は生きていることを鑑みれば、実は彼ら寄生虫こそ我々に身近な生き物ではある。本書に登場するのは、そんな生物界最大派閥の寄生虫のうち、ほんの一握り。しかし寄生虫を誰より知り、誰よりも愛している人たちが選んだ選りすぐりの一握りである。

本書があくまでビジュアルブックであり、ピクチャーブックでない点もよい。生々しい標本であれば、本物が目黒でいつでもあなたを待っている。そこまで出来ないあなたでも、本書の白黒の図版とユーモア溢れるキャプションであれば、フタゴムシから日本住血吸虫に至る小宇宙マイクロコズムを巡る旅に最初から最後まで付き合えるだろう。

彼らに嫌悪感を抱かぬ人、いや宿主ホストは存在しないだろう。

しかし本書をみた後、嫌悪感しか抱けぬ人もまた存在しないだろう。

あなたもわたしもまた、この星に対する寄生体パラサイトなのだから。

Dan the Parasite