9月に出たのに何を今さら感があるけど法林先生のビデオが出たのだって昨日(2013.11.06)だし、ま、いっか。
- といっても、iPhone 5sの感想は3行で足りてしまう。
- ゴールド、上品にきれい。Webページにあるのより実物のが上品。もっとジゴロっぽいのをちょっぴり期待していたのに(笑)。ブラック、いや今回はスペースグレイも4→4Sの時とちがってはっきりわかってよかったね。
- Touch ID、便利だわー。
- でもA7、iPhoneだと速すぎてご利益わからないわー。iPadは一触瞭然だけど。
- というわけで、前回以上に「先代はわざわざ機種変更するまでもなし、先々代は機種変更でハピエスト」という、ハードウェアの進化が人体を追い抜いた時代に最適な更新であった。
という次第なのでiPhone 5Sという単一の製品ではなく、iPhoneというエコシステムについて書くことにする。
- 変化の大きさという点では、OSの方があまりに大きくてハードウェアの変化がさらに地味になった感じ。
- とはいえ、妻や長女はおろか、母まで自分でOSアップデートして「なにこれ違う」とのたまい、にも関わらず一週間後にはけろっとしていたのを見ると、iOS7の「これでいいのだ」感は前回以上だと認めざるを得ない。
- 今回もPerfect Manual出てる。この場を借りて献本御礼。それでもiOS7にとっつけない人はこちらを。 しかも前回「分ける必要、あったんですか?」と言ったにも関わらず、またもやキャリア別に。大人の事情だそうで(苦笑)。
- Appleの真の実力は、毎年新iPhoneを出すことではなく、それに先行して旧商品にも新OSを提供することにある。 初代から当代まで動いている様は圧巻だが、それ以上に圧巻なのはiPhone 4までiOS7が動いていること。
- 404 Blog Not Found:iPhoneがガラパゴスケータイより劣っていていい理由
iPhoneには、文字通り明日がある。今日ダメなものは明日直せる。ITの世界での常識がそのまま通用するのだ。
こう書いたのが5年以上前。今ではみんなわかっていることだが、それがきちんと出来ているスマートフォンは未だにiPhoneだけだというのが悲しい。この点に関しては、"5 years ahead of any other phone"というJobsの台詞は今なお真であることは、現状では図らずも悲しくGoogle自身が先代Nexus 7やGalaxy Nexusで証明してしまった形となっている。 - その一つの結果が、以下。
まさかここまでとは。.@livedoorblog 久々に http://t.co/n6V4ICfWqo のアクセス解析を見たら… pic.twitter.com/Bla2jbeKki
— Dan Kogai (@dankogai) November 5, 2013
iPhoneは、売れている以上に使われている。いくらiPhoneが売れているとはいっても、DOCOMOが「iPhoneはじめました」する以前4割弱。にも関わらず、本blogのトラフィックではiPad抜きでも1:3で、iPadも含めると1:4。DOCOMOがついに「i堕ち」したことで、この差はさらに広がることが予想される。
売れた製品が使われること。
それこそがAppleの望みであり、そしてそれが達成されていることこそが、GoogleがiOSアプリの品質をAndroidアプリより落とさない、いや落とせない理由でもある。「使われてなんぼ」は、Android端末が売れただけでは一文も入らないGoogleにこそより本質的で、Android端末が売れた台数ほどトラフィックを稼いでくれない以上、iOS版をソデにすることは出来ない。これはAmazonも同様で、iPadはKindle Fireを兼ねてもその逆は成り立たない。
ではなぜiPhoneが売れた時点で日銭が入るAppleは、iOSどころかiLifeやiWorkを無料で配っているのか?
高い、いや高すぎるほどの利益率?それは無料配布を可能としている理由にはなっても、無料配布を実際にしている理由にはならない。もう金を受け取っているのだから、あとは何をやってもコストがかかる以上、一番よいのは何もしないことではないのか?旧端末を新OSでリフレッシュするなんて自殺行為ではないのか?
違うのである。あれは投資なのだ。
次期製品を、買ってもらうための。
新製品を売り捨てている競合他者は、それがわかっていない。
新製品が売り捨てであれば、現製品を改善する方法は商品の買い替えしかない。それであれば、別に同じベンダーの次期製品を現行ユーザーが買わねばならぬ義理はまるでない。実際私のAndroid Phonesの遍歴を見ると、HTC → Samsung → Google/LG と一つも同じヴェンダーはない。
Samsungだけは、「次も自社製品を選んでもらう」ことの重要性を理解しているように見えなくもない。[戻る]ボタンが右に付いている点は私はだいっきらいで、これもまたNexus 5にした理由であるが、Galaxyという端末の一貫性を鑑みればこのことは間違ってはいない。いや、あのSamsung Appsの出来の悪さからすると、理解しているというよりAppleのひそみにならっているだけなのかも知れないが、SにしろNoteにしろ、Android PhonesのうちGalaxyだけは世代をまたぐ継続性を感じられる。
と、ここまでは「MuramasaがMacBook Airになれなかった理由」をはじめ以前から述べてきた。しかしMacやiPadの隆盛はこれで説明がついても、iPhoneの隆盛はこれだけでは説明できない。
なぜ当初は「まずは1000万台売りたい」とJobsが言っていた製品が、一月でそれ以上売れるようになったのか?
さらに大きな果実を、キャリアーにもたらしたからだ。
iPhone 5s 16GBを二年間使った場合の総額は、新規でおおよそ16万円。うち端末の値段は7万円ほどなので、キャリアーの取り分は9万円ほどになる。
憶測ではあるが、「iPhoneエコノミー」のうち、キャリアーの占める割合はAppleのそれを上回っているのではないか。
「強引だが面倒見のいい旦那」。キャリアーにとってのAppleはそのように見える。各キャリアーごとにカスタマイズされた初期ブックマーク。回線品質にあわせて段階的に上げられて来たApp Storeのダウンロード制限。そしてLTE導入のタイミング… Appleと各キャリアーは、きちんと歩調を合わせている。
しかしiPhone以前、旦那とはキャリアーのことだった。ヴェンダーは旦那の要望に応じて端末を作っていた。特に日本はそれが顕著で、だからこそ世界にさきがけてi-Modeが生まれた一方、「モバイルインターネットに一番近い島」の中でガラパゴス化が進んでいった。一番の大旦那が一番最後に堕ちたのは、今振り返れば当然のことだったのかも知れない。
一方欧州では、GSMとSIMのおかげで、回線と端末のデカップリングがすでになされていた。これにより回線代と端末代が市場の力で抑えられる一方、高速回線への投資も抑制された。
明暗分かれる欧米の携帯通信市場 - LTEで差が拡大(GSMA報告) - WirelessWire News(ワイヤレスワイヤーニュース)ユーザーの利用時間では、米国が月平均15時間に対し欧州が同3時間。トラフィック(データ通信利用量)については、米国が欧州の約2倍に。さらにネットワークの通信速度でも米国は欧州のそれを約74%上回ったという。こうした違いを生み出した理由のひとつはLTEネットワークの展開状況で、米国では今年中にネットワーク全体の20%がLTEになるのに対し、欧州では2%程度に留まる見通し。また、携帯通信事業者による設備投資額が2007年以降、米国では年率70%のペースで増加してきたのに対し、欧州では減少が続いたこともこうした差を生み出す原因になったという。
iPhoneが日米で強く欧州で弱いのも、これで説明がついてしまう。高速回線なきiPhoneはただのiPod Touchであり、さすれば高価値よりも低価格の方に人気が集まるのも当然と言えよう。
iPhoneという体験の価値は、iPhoneという端末だけでは決まらない。
Appleもユーザーも、わかっているのである。前者は意識的に、後者は無意識的に。
シリコンバレーが考える「次の10億人」 - nanapi社長日記 @kensuuGoogleやAppleの発表を見ていると、やはり次のキーワードは「次の10億人」なんだろうなあ、と感じます
いや、違う。GoogleはとにかくAppleは。
Appleが見ているのは、「最良の十億人」。品質にうるさく、しかし一旦納得すれば品質に金を惜しまない、10億人。行き渡ったのはうち2割5分ぐらいだろうか。Appleにとっては、きちんと使ってくれる2億5000万人の方が、ただ持っているだけの10億人より、ましてやこれから持つことになる10億人よりはるかに重要なのだ。
そしてiPhoneが一番売れている国は、日本。
私には、日本においては「中流」という概念がまだ死語になっていない傍証に見えるのだけど。
Dan the User Since 3G
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