寝込みうどんになりながらiPadで以下を読んだら熱がぶりかえしたので。

いや比べるべきは Windows と Mac じゃないのよ。

Windows と *nix。

以下、NASDAQでTechnology Companyに分類されている先週末の時価総額上位20社を塗り分けてみた。

SymbolMarket Cap. (B$)
1AAPL
475
2GOOG
398
3MSFT
333
4IBM
194
5FB
171
6ORCL
169
7QCOM
132
8INTC
125
9CSCO
111
10TSM
96
11SAP
92
12DCM
63
13HPQ
60
14EMC
57
15TXN
51
16VMW
47
17BIDU
44
18YHOO
38
19ADP
37
20CRM
35
Source:Technology Companies - NASDAQ.com

*nixにより強く依存する企業、*winにより強く依存どちらにより依存するか不明というわけだが、こうして見ると今世紀に入ってからより大きく成長したのは*nixな企業で、winな企業はnot winningでであることは否定し難い。

ここにAMZNが入っていないのが奇異に見えるが、同社はTechではなくRetailに分類されているのでこうなる。仮にTechに分類するとなるとORCLとQCOMの間に来る。もちろんその場合、塗り分けるとしたら*nix側になるだろうし、黄色のIBMやSAPにしても、Win依存度は減る傾向にあるし、INTCですら傾向だけ見れば減っているのは間違いない。いや、本家MSFTですら、Azureのことを考えればもしかして…

拙著「コードなエッセイ」でも「*nixは勝った」とは書いたけど、そう書いた当時(2011年)よりもその差はさらに広がったようだ。

どうしてこうなった?

その答えを、IBMに私は見たように思う。

先日、同社の計らいで本物のSystem zに触れる機会を得た。メインフレームとはWindowsどころでなく過去の遺物かと思いきや、それは実は中世の欧州から見たローマの水道橋が過去の遺物という意味と同じ意味においてであって、それがどれほど先進的かは「Linux移植してみたら他のarchの半分のコードで済んだった」というエピソード一つとっても認めざるを得ない。「メインフレームは古い。という考え方を古くしたのはIBMのSystem z」、仰るとおり。上記リストの16番、VMWの18番の仮想化なんて、それこそTorvaldsや私がはな垂れ小僧だった頃からお手の物だったのだし。

でもね、

でもね、

でもね。

ほとんどの人にとって、それは遠い国の王女様王子様様のお話と同じなんです。ゴシップの対象にはなってもデートの対象にはならない。メインフレームはほとんどの人にとって、(Windowsで動いている!)ATM端末を通してしか触れない高嶺の花で、そこで「花とはなんぞや?」を取っ組み合いや睦み合いを通して学ぶ対象とはなりえないんですよ。

だから、再発明しちゃう。

手頃で気心知れた対象で。

大人に頼めば赤子の手をひねるような、でも子供のうちはまるで歯がたたなかったことが、いつの魔にか出来るようになっちゃう。そして彼らが大人になる頃には、わざわざ「長老」に頼むまでもなく自分たちでやっちゃうようになる。

Windowsは、メインフレームよりは遥かに身近な存在ではある。メインフレームの端末としても使われているし。

でも、数千円のSDカードやRaspberry Piほど身近な身近な存在になるのはきわめて難しい。「Raspberry Piではじめる どきどきプログラミング」のようなどきどきをWindowsで用意するのは容易じゃない。そうそう。この場を借りて献本御礼。

ライセンスがハードウェアより高額だから?

それもあるけれど、仮に明日から無料でオープンソースになったとしても難しいし、難易度はますます上がっているように感じている。

その理由が、インターネット。

Windowsでインターネットの何かを作るというのは、*nixに比べるとどうしても手袋越しな感覚になっちゃう。URL一つとっても、/\を読み替えなくちゃいけないし、端末を使っていると、ctrlキーがMacのcmdの役割に取られちゃっているのでとても打ちづらい。出来ることに差はなくても、英語に囲まれている中でドイツ語を習っているようなもどかしさがぬぐえない。「あ、英語でいいじゃん」となってしまいがち。

使う人にとどまっている間は、どっちがいいかは趣味の問題だと思う。だけど結局作る人なくしては、使う人が使うものもできない。そして作る側にまわってみると、キーストロークやコマンド名といったわずかな差がじわじわ来る。"Don't bet against the internet"というのはGoogleのCEO、Eric Schmidtの台詞だけれども、Windowsで何かを作ったり直したりするたびに、「ネットに逆ばり」している気になってしまう。GitHub for Windows が GitHub for Mac より一年も遅れて登場したのもそれが理由なんじゃないかな…

創業100年以上を経たIBMが今なおそうであるように、私の娘たちが今の私ぐらいになった暁にもMSFTがエクセレント・カンパニーであり続ける可能性はとても高いと思う。その頃にはWindows Xとか出ているのかな…

だけど、*nix的思想に、もう四半世紀も導かれ続けたインターネットの/な風向きが\となるのは、今から冷戦をやり直して東側が勝利を収めるよりあり得難いとも感じる。

そうやってぼーっと考えてみると、 Windows vs. Mac という宗教戦争自体、もう一回り大きな文化戦争の一陽動作戦に過ぎないと思えてきませんか?ソ連が崩壊したのだって、米国との体面競争にかまけているうちに同盟国を次々失った結果ではありませんか。タブレットの世界で起きていることは「ソ連」の終わりのはじまりなのか、それとも「ロシア」のはじまりなのか…大国ならぬ小市民としては、「良さがわからなすぎて、死にたい」とも言ってられません。問題なのは良い悪いではなく、ネットに対して逆ばりになっていないか否かなのだから…

Dan the Apprehensive Better